北海道のキノコ

北海道のキノコ 五十嵐恒夫 著

北海道のローカルきのこ図鑑。

さすが日本屈指のキノコ王国・北海道だけあって、ローカルといえど、その掲載種数は800。標準的なコンパクト図鑑の200~300種など歯牙にもかけない充実ぶりだ。

北海道ならではといった北方のキノコから、暖温帯にまで分布する一般的なキノコまで広くカバーしている。普段見過ごしがちな小型菌や、サルノコシカケをはじめとする硬質菌など、食用には向かないマイナー菌類がしっかり網羅されているので、なかなか侮れない。
 
本は携帯可能な大きさ。レイアウトはシンプルで見やすく、写真の質も申し分ない。ただ、キノコのひとつひとつに対する特徴の記述は、スペースの制約上、必要最低限といった感があり、文章が堅くて少々とっつきにくいという面も合わせて不満が残る。しょうがないと言えばしょうがないんだけど。
 
位置的には『山渓フィールドブックス きのこ』と似たような感じになるのかな。大型の本格的菌類図鑑をおぎなう携帯サブ図鑑として十分に期待できる。もちろん北海道在住でなくとも利用可能だ。 

ちなみにこれとは別に『北海道きのこ図鑑』というのがある。『北海道のキノコ』をライバル視しているからなのか、改訂を繰り返し、最新の増補版でこちらも750ほどの掲載種数を誇っているので、なかなか甲乙つけがたい。
ただ『北海道のキノコ』がオーソドックスな科別の配列になっているのに対して『きのこ図鑑』は発生場所別になっているので、よりキノコ狩り向けの内容になっていると言えるかもしれない。キノコの特徴の記述は『きのこ図鑑』の方が情報が多いので、私のような観察屋さんにとっては悩ましいところだ。どっちにしよう、どっちに~

…いや、ホントのこと言うとどっちも必要ないんだよね。三重在住の私が、わざわざ北海道の図鑑買う必要なんて、どこにも。ホントどーすんだろ、図鑑なんか集めて…。

それはさておきこの図鑑、実用一辺倒のわりには表紙のデザインが振るっている。アカヤマドリの幼菌が散りばめられているんだけど、これ、人為的にレイアウトしたものではない。撮影した写真の背景を白く抜いたものをそのまま貼りつけてあるということが、この本を読むとわかる。つまり、自然に生えてきたアカヤマドリの位置をそのまま表紙に利用しているのだ。しかもこれがバッチリはまっている。特に背表紙がね。

んー、なかなか味なこと考えるじゃないの。デザイナーさんはしてやったりといったトコじゃないのかな。

「月刊きのこ人」(こじましんいちろう)2009年08月30日に掲載分を再掲載

Facebook コメント

Follow me!

コメントを残す

杏美菌譜

前の記事

カエンタケ