粘菌ロンと楠公少年

著者の片岡さんより献本していただきました。

「粘菌ロンと楠公少年」

実は今年の「いきもにあ」に行った時に片岡さんが出店しておられて、販売さている帽子やアクセサリーの話をし、「オオサカきのこ大祭にも出店してくださいよ~」なんて話をした後、「今度この本を出版したのですよ~」という話になりました。その時は「あぁそうですかぁ~」で終わったでしたが、後になって「あぁ、買っとけばよかった!!」と後悔していたのですが、そこはもう後の祭り。

そんな折、片岡さんに川上先生と一緒にきのこ放談の中の企画「粘菌放談」への出演打診をしていたところ、この「粘菌ロンと楠公少年を献本をしたい」という嬉しいお話を頂いた、というわけなのでした。

ここでこの本が出来た経緯をちょっと説明・・・
もともとこの漫画の元というのは大阪日日新聞に掲載されていたものでした。
片岡さんがストーリーを考え、友人の小学校教師樗木厚(おおてき あつし)さんが漫画を担当しして週に一度(後に二週に一度になる)、掲載されていたそうです。
それが、書籍化になる段階で二転三転があり、結局脚本をもう一度作り直し、出版社も 円盤・リクロ舎になり、漫画もつるんづマリーさんに描いてもらうことになって、やっとこの書籍化が実現したそうです。

さて、「粘菌ロンと楠公少年」という漫画で僕の最も関心があったのは

どうやって粘菌を題材に漫画にしたのか?

ということ。
実は以前にキノコの絵本を作ろう!ということできのこびとメンバーの岩間杏美ちゃんに「話はオレが作るんで絵を描いてケロ」ということで、絵本を作ったことがありました(きのこびとのサイトで見れるよ w)。
その時に思ったことが

キノコのような動かなくて、しゃべらないもので物語を作るのは難しい!

であった。
そう、キノコに話をさせようとすると、キノコの絵に目をつけ、口をつける必要が出てくる。それじゃあすでにリアルではなくなる。僕たちが目指していたのはいかにリアルのままで「物語」を作るか?ということでした。できるだけリアルに忠実でしかもしっかりとそのキノコの特徴は押さえておく、というのがその絵本の目的でしたがなかなか難しいのですよね、これが。


そんな絵本を作っていたので、今回の漫画はどう作られているのか?というのがもっとも興味があったのですが、そのお話をリアルにする(粘菌が話をしない)ための「装置」として「人間と共生する」という手段を考えられたのには敬服しました。もちろん粘菌と人間が共生すること自体すでにリアルではないのですが、人間を「木」などに置き換えるだけでそこはクリア出来ているんじゃないかと思うのです。そして粘菌の「意思」というものはこの共生している子供たちへ「心の声」として伝わり、子供たちはその声により、いろいろな出来事、そして冒険へと導かれていくのです。

一つだけネタバレを書かせてください。

漫画の冒頭で粘菌と共生している楠公少年が粘菌を使って怪我や病気を治すというお話があります。
これは片岡さんが漫画の脚本を作りながら自身のお母さんの末期がんの介護をしているのを見て、息子さんがこんなことを言ったそうなのです。

「粘菌って調べたらもしかしたら癌が治せるかも。僕調べてみる!」

実は「粘菌を使って病気を治す」というのは少し唐突で、奇想天外の様に思えたのですが、息子さんの「言葉」というものが、アメーバの様に広がっていき、この物語の骨子が創造されていったんだなぁ、、と感心しました。
いわばこの物語は片岡さんと息子さん、そしてお母さん含めた大きな愛で作られているでしょうね (*^^*)

また物語の中では俗な言い方をすれば「粘菌あるある」の小ネタが続々と出てきます。
もし粘菌の事を少しでも知っていたなら、ところどころで「ここでそれ出てくるか~!」という感じでクスッと笑ってしまいます(笑)
僕もさほど粘菌には詳しくないので、小ネタをもしかしてかなり見逃している可能性もあるなぁ、、それってもったいないよなぁ、、なんて読み終わった今、思っています。

ですので、単純に漫画として楽しく読むだけでなく、詳しい解説みたいなものがその場その場であったらいいなぁ、、と感じました。ただ、そんな解説を入れていくとページ数が倍になってしまうかもしれないですけどね (*^^*)

そして一つ思うのは「教育本」としてこの本をどんどん活用していって欲しいなぁ、、と。
僕は昆虫やキノコ、そしてこの粘菌含めた日本に生息している生物のたちの未来は、こうした小さな生き物に目を向けることによってしか守られていかないのだと思うのです。

一口に「生物多様性が大事」と言ったりします。
ただし、その意味を多くの人がこの言葉を絵空事、または未来への呪文のように思っているのではないでしょうか?
以前オイカワマルさんがTwitterでこんなつぶやきをされています。

特定の希少種だけを保全する、というのは20世紀の保全の考え方です。21世紀は生物多様性を保全する中で、希少種を保全していかないといけないのです。いけないというか、そういう方向でやらないと、うまくいかないし先がないということがわかってきたわけです。

https://twitter.com/oikawamaru/status/1176772916614057984

何故生物多様性が大事なのか?
僕たち人類を含めた多くの生き物がこれからもずっと生存し、種を継続していくためには、ある特定の主を守るだけじゃなく、色んな生物の種を守ることでこそ特定の種も存続することが出来るのだ、ということですね。
しかし、個々の我々に一体何が出来るのか?どうしたら人間とそういった種たちとの共存が可能になるのだろうか?

僕らに出来ることはまずは一つ。

子供たちにその大切さを伝える

ということではないでしょうか?
その一助として、きっかけとして、この「粘菌ロンと楠公少年」が存在している、というのは言いすぎですかね?(笑)

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