松きのこはしいたけ(後編)

9月末、観察会に参加してキノコ散策をしているときにFBメッセンジャーに一通のメッセージが飛び込んできた。

「きのこ散策に行く途中に例のキノコをゲットしました、きのこびと用に送りますので、住所教えて下さい」

メールの主はFacebookの投稿でどう返事していいか分からないコメントばかり入れてくるタニタニである。

「ん?例の?なんのキノコ??」

今回のメッセージも何のことやら分からなかった。
「例の」ってのが何のことを指しているのか分からない上に「きのこびと用に」ってのも意味不明。「住所送ってください」ってとこだけはかろうじて分かる(笑)

つまりはタニタニが「そのキノコ」を自腹で購入し、きのこびとを書かせたいがために、僕にそのキノコを送ってくれる、ということらしい。
「そのキノコ」は何かと尋ねると、タニタニはしれっと

「松きのこでございます」

ってことで、まんまと乗せられて書いております(苦笑)

「しかし、松きのこってめっちゃ高いんちゃうんやろか?」

「松きのこ 販売」と検索すると結構なお値段する松きのこが出てくる。

例えば dinos のこんなヤツ「広島県世羅産『松きのこ』特大(250g)」\4,422円+送料
https://www.dinos.co.jp/p/1136100774/

それとか楽天市場でこんなヤツ「四季彩松きのこ 寿」\5,800円+送料
https://item.rakuten.co.jp/joys-jac/e375310411a00001/

なかなかいいお値段がしますなぁ、、、
そんな「いいお値段」する松きのこを自腹で送ってくれるタニタニ。

「今度モーニングでもごちそうしてくれればオッケーです」

なんて言ってくれてる。まじか!!
送料込みで軽く5000円を超えるしろものを数百円のモーニングでいいと!!(@_@;)
なんという太っ腹!!
いつもは結構チープな服とか着てるのに、福岡に行くのだってもったいないからと名古屋から高速を使わずに何十時間もかけて行ったのに、それなのに、それなのに、今回はすごい太っ腹!
もしかして、イザというときは豪快に使うタイプなのか、タニタニ!!
今がイザというときなのか!!松きのこなのに~(笑)

松きのこがやってきた

そうして松きのこがやってきた。
クール宅急便でやってきた松きのこたち。
その恭しいほどの箱を開けて、箱にびっしりと詰まっている梱包材を紐解いていくと、コレが噂の!!という松きのこが出現してきたのだ。
しかし、、、

あれれ・・・なんかチープ感満載な容器 (´・ω・`)

まるで、そこいらのスーパーで売ってるようなチープさである。
そしてこれまたチープ感満載の値札を見ると

え”? ご、ごひゃくえん?

どこからどう見ても、思っていたのより一桁少ない数字であった(笑)
なので僕は届いてすかさずタニタニにお礼と共にこんなメッセージを送った。

「これってシイタケと同じぐらいの値段じゃないの?」

言うとくけどタニタニは単身赴任。スーパーマーケットでの価格相場は知り尽くしている。

「同じ値段だせばもっとおっきくて肉厚なやつが手に入るっす!」

なるほど、、やはり松きのこは普通のシイタケよりは少しお高めなのね。
でも、通販で販売している高級な松きのこが送られてくると思ってた僕はかなり拍子抜けするとともに、少し安心した。

あ、やっぱりタニタニは、いつものタニタニだったんだ・・・・(ほっ)

さて、一安心したところで、松きのこに戻ろう。
もう一度トップの写真をここに貼ります。

松きのこ

この写真を見て、「あ、マツタケだ!」と思う人、手を上げてください。
まぁ、ベニタケの写真を撮っている時に

「ほう、、シイタケですか?」

と声をかけられた事もあるので、今更何を言われても驚かない僕ですが、、、、それでもです!これを見て「マツタケだ!」という人物は決して信用してはならない。
なぜなら、そんな事を平気で言う人物には何か下心があるに違いないからだ。

現にこういうページを紹介しよう
「【衝撃】まるでマツタケ! 世羅きのこ園の「松きのこ」が見た目も香りもリアルにマツタケで驚いた件について」
https://rocketnews24.com/2015/11/09/661441/

「ROCKET NEWS24」というサイトである。ここにはこんな事が書いてある。

  1. 価格はマツタケの半分、香りはマツタケの “松きのこ”
  2. “松きのこ” の見た目はなるほど、シイタケというよりはマツタケに近い
  3. 大きさもシイタケの2~3倍はある
  4. 香りをかいでみると「確かにマツタケ……!」

さて、これは本当なのだろうか??
これを書いた人は、本気でこう思っているのだろうか???
本気だとしたら、よほどの味覚音痴、嗅覚音痴、と言ってしまっていいのではないか?
こんなライターにこんな記事を書かせていいのかな??それとも・・・・

で、送られてきた松きのこをまんじりと見つめながら、こやつは一体なにものなのか・・・と考え込んだ。
しかしいくら考えても答えは出ないので、まずこの一本を手に持ち、嫁のところまで持っていき、予備知識も何にも持ち合わせてない彼女に、この松きのこを見せてこう言ってみた。

「これ、何の匂いがする?」

一秒もかからない間に、僕の方をちらりと見ただけでこう言い放った。

「シイタケやな!

一点の曇りもないその言葉には、何の飾りもないけど、そこには物事の核心を鋭く突き刺すぐらいの「響き」があったのだ。

「そ、そやろ、、どう匂ってもそやな、、、」

それで僕の迷いは消えた。
この香りがマツタケであるはずがない、、、、と。

では「見た目」はどうなのだろう?

「ほんで、これ何に見える?」

つまらんこと聞くんでない、という顔をした嫁は、またも秒殺で

「だから、シイタケやろ!」

と少しイライラしながら、吐き捨てるように言う。
よし!もう僕の心は揺らがないぞ!!(笑)
間違いない、どう考えてもこれは「シイタケ」なのだ。

松きのこを分解する

さて、ではこの松きのこを分解してみましょう。
まず縦に真っ二つ。

松きのこの切断図

傘の部分は縁部がくるっと巻いており、傘がまだ開ききっていないことが良く分かる。 ヒダはそれほど厚くなく、傘の小ささに比べて、柄がかなり長いことがわかる。また柄の肉は中実でかなり弾力が感じられる。

では傘の裏である。

松きのこのヒダ

ヒダはやや密で、典型的なシイタケのヒダのように見える。

ではこの松きのこがシイタケとマツタケのどちらによく似てるか比較してみることにする。今回は「日本のきのこ」の記述を用います。

「日本のきのこ」 (山溪カラー名鑑) 
マツタケシイタケ
8~20(30)cm4~10cm
時に20cm以上
初め球形のちまんじゅう形から中高の平らとなりついには縁部がそり返る初めまんじゅう形で,縁は強く内側に巻くが,のちほぼ平らに開く
褐色茶褐色~黒褐色または淡褐色
状態繊維状鱗片におおわれるが、しだいに裂け目やひび割れができる。しばしばひび割れを生じ鱗片状~亀甲状となる
初め特に傘の周辺部に 白~淡褐色、綿毛状の鱗片をつけるが消失しやすい
ひだ密、古くなると褐色のしみができる
白色のち褐色のしみを生じる。白色
長さ10~20(30) cm3~5 (10)cm
褐色、 頭部は白色 つばより上は白色,下は白~帯褐色
状態繊維状の鱗片におおわれ、強靭、繊維状~鱗片状
白色白色
状態ち密、特有の香りがある。ち密
つば状態綿毛状、永存性不完全なつばがあり

こうやって特徴を列挙して、字面だけを追っていくと、マツタケとシイタケの特徴がとっても似ているのがわかる。
しかし綿密に特徴を押さえていくと、

この中でマツタケの方だけに近いのは柄の長さのみである。

つまり、その「柄の長さ」のみを持って「マツタケに似ている」という風に謳われているのですね。

しかし!!ここで、本物のマツタケを見てもらいましょう。
これは菌友が、とある山でみつけた正真正銘のマツタケである。

正真正銘のマツタケ

サイズ感は伝わらないかもしれないけど、これかなりおっきいです。
手に持った感じはこれぐらいなので、わかるかなぁ、、、

正真正銘のマツタケ

では比較するためにもう一回松きのこに登場してもらいましょう。

松きのこ

ぜんぜん似てないよね?(笑)
なんだかひ弱いし、貧素。そして何よりマツタケが持つ神々しさがまるでない。
片方ばかり見ていると分からなくなるけど、こうしてちゃんと比較すると松きのこがいかにシイタケである、というのがよくわかります。

つまり「柄が長い」というとこに目眩ましされて、マツタケに見えしまう、、というマジックを利用しているのですね。

ではでは、ここで衝撃の写真をお見せしましょう。

柄の長いシイタケです(笑)
某キノコ生産者の方が、松きのこに似せて(同じ栽培方法かどうかは不明)シイタケを栽培したのだそうです。

僕だったら「松きのこ」っていう怪しい名前で売り出さずに「エナガシイタケ」または「アシナガシイタケ」って名前で売り出したらどうかなと思うんですよねぇ~
どうだろう?売れないか?

松きのこを食べてみる

ではでは、松きのこを食べてみます。

料理方法は一番キノコの味がわかる「ソテー」。

シイタケは柄の中までしっかりと実が詰まっており、歯ごたえは十分。なので生などではなく火を通して食べたらシコシコとして、ほんとに美味しいのである。

僕の友人(キノコフェチでない)達にキノコを食べるんだったら何が好き?と良く聞かれることがあるが、僕は迷うことなく「シイタケやな」と答えることにしている。すると友人たちはとっても残念な表情を浮かべる。それだけ色んなキノコを見て、食べてきているのに、一番好きなキノコは日本で一番ポピュラーなキノコである「シイタケ」だなんで、、、、とがっかりするようだ。

しかしシイタケを舐めてはいけませんよ。シイタケほどいろんな食材と合うものはないんじゃないか?と僕は思っている。例えばイタリアン。小さい頃に間引きされたシイタケをアヒージョにして食べるというのはシイタケ農家さんに教えてもらった最高の料理だし、普通のシイタケでもパスタや、ドリア、その他さまざまな料理の素材として使って合うことは間違いない。

しかし、イタリアンと言えばポルチーニとかモリーユとかそんな日本ではなかなかお目にかかれない(あるんだけどね w)食材を使ってシャレオツな名前のついたパスタを思い浮かべる人がいるだろうし、あの名前だけで料金2倍!的なところってあるよね?

カリカリにローストしたベーコンと季節の温野菜を使ったシチリア風トマトパスタ

はい、3500円。
とかね(笑)

「それ、普通のトマトパスタよね?」

なんてツッコミは野暮だ。してはいけない。
この名前にこそ1500円ぐらいの価値があるのだ(笑)。

そこで「シイタケ」である。
残念ながらシイタケというのは「高級」というイメージに欠ける。
例えばこんな料理名があったらどうだろうか?

和歌山産シイタケと大阪湾で採れたクロダイを使った関西風パスタ

いや、絶対に美味しいと思うんだけど、なんかベタなんですよね。
それよか

南イタリア産ポルチーニとアドリア海で採れたヒラメのカターニア風パスタ

の方が断然オシャレで断然高級感がたっぷりよね?(笑)

ただ、そんな逆風の中でも、シイタケっていう食材はかなりポイントは高いと思うのだ。

・・・ってことで話は元に戻ってソテーである。
松きのこ(シイタケ)を塩だけでソテーしてみたのがこれである。

純和風なお皿と松きのこの質感がとってもマッチしてると思うのですが・・・(笑)

まぁ、あまりにも質素過ぎて、「お前、毎日こんなの食ってるの?」と同情される方もおられるかもしれません。そして、いやぁ、これならうちにご飯食べにおいでよ、もっと凝ったシイタケ料理作ってあげるよ、、というお優しい言葉をかけてくれる方もおられるでしょう。

しかし!!僕はこれを「日常食」として食べてるわけではありませんので!(きっぱり w)

何度も言いますが、これは松きのこの味を確かめるために、できるだけシンプルに頂いているわけです。
凝ったコテコテの味付けをしてしまったら、キノコの風味とか、香りとか、そして何より味が隠れてしまうのです。なのでここはあえてソテーという超シンプルな料理をおこなったわけです。

で、やっと結論を述べさせてもらいます。

この松きのこ、ほんとに美味かったです!!

シイタケはキノコの中で一番「グアニル酸」という旨味成分を含んでいるのですが、そのグアニル酸をこれほどまでに鮮やかに感じることが出来たことは今までかつてありませんでした。
日本人として生まれて「シイタケを試食する」という機会は少なく、たいがいは当たり前のように料理の食材として使われ、当たり前のように食べていただけであった。
が、しかし、こうやってこの松きのこを食べてみると改めてシイタケの偉大さが分かった気がする。

いや、シイタケに「今まで軽んじてきてしまって済まなかった m(_ _)m」と謝りたい気分だ。
それほどまでに普通に我々日本人の生活の中に溶け込んでいる、ということなんだろう。
しかし、ここいら辺で意識を切り替える必要がでてきた。

シイタケをもう少し価値あるものとして良いのではないか?

そんな気持ちが芽生えてきたことも、今回松きのこを食べて思ったことだ。
ということは、5800円の贈答用松きのこもあっても良いと思う。
また、このタニタニが送ってくれた500円の松きのこだって、立派な松きのこなのである。
それにどれぐらい付加価値をつけて高く売ってもまったくと言っていいほどノープロブレム。

あと、名誉のために書いておきますが、この500円の松きのこを作っている生産者のWEBサイトを見てみると「前編」で書いたようなトンデモ情報など一文字も書いてなく、実に堅実に、実に誠実にシイタケを作って、そして地道に販売している様子が伺えてとっても好感がもてる生産者さんである。
そんな真面目な生産者さんもいれば、一方では怪しい宣伝文句で大々的に売り出している生産者たちもいることは確かである。

ただ、ただただ、大事な道を踏み外してはいけない。

いくら付加価値をつけようと、どうしようと松きのこはシイタケなのだ。

かの有名なきのこ作家「りんごきのこ」さんの名作の皿をご存知だろうか?
その至宝とも言えるお皿に刻まれている「言葉」がある。
ちゃんと目を凝らして、そして正座をしてこのお皿をじっくり眺めて欲しいものだ。

ではその名作を両目を開けてしっかりと見てください。




りんごきのこさん、グッジョブ!!

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