パンケーキと呼ばないで!

最近、イグチの写真をちゃんと撮るようになってから、だんだんイグチが何を思ってるか判るようになってきた。
最近のイグチ君が良くボヤいているのはこんなことにだ。

「いやなぁ、ほんと近頃オレのこと見たら『パンケーキ、パンケーキ』いうやつおるけどな、もうな、、飽き飽きしとんねん!」

ふむふむ、なるほど僕の周りでも、友人たちにイグチの写真を見せたら「パンケーキみたいやな~」なんてついついコメントするけど、ほんとその表現、陳腐化してるんですよね。
もっと別の表現ないんか、、、っちゅうぐらいみんな口を揃えて「パンケーキ」いうのんよね。

「最初は良かったんや、オレもな。なんやモダンな感じするやん、パンケーキ。粋でオシャレな感じて??まぁ、そこまでは言わんけどな、オレは」

なるほど、イグチ君も最初は結構気に入ってたみたいね、パンケーキ。そう言われれば僕たちが子供の頃によく食べたのは「ホットケーキ」っていう呼び名やったけどね、、いつの間にか世間ではパンケーキって呼ばれるようになったみたいね。

「それとな、初めの頃はテングたちにもパンケーキって呼ばれること自慢してたんやけどな、最近はテングはおろか、フーセンたちにも馬鹿にされとんねん、オレ。え?なんで馬鹿にされるかて?そらパンケーキになんか似てへんからやわ」

「パンケーキに似ていない」か、、、それは僕もそう思うんです。素人的にはパンケーキって感じてもいいのだが、少しでもキノコを知ってるひとなら、パンケーキって表現はいかがなものでしょう?安直だ、、という以前にまずは「似てないよね?」と思うべきなのであります。
なので「似てない」を検証してみなければなりません。

そこで、パンケーキを作ってもらいました(笑)。

イグチはパンケーキはに似ているのか?

パンケーキ作成&写真:メルヘン・ヤスコ

パンケーキです。

ホットケーキとも言いますが、厳密に言うといろいろ違いはあるようですが、ここではそんな違いなど誤差の範囲なので気にしません(割と大雑把 w)。

実は我が家ではほとんどホットケーキなど食べない(作らない)ので、小さな子どもがいる家庭はないか、ということでメルヘン・ヤスコに「ホットケーキとか作る?」って聞いてみたのである。
すると「食べますよー」との事だったので、すかさず「きのこびと」の記事で使いたいと伝えて、その作成過程と詳細の写真を撮ってもらうようにお願いしたのだ。

こんなアホなお願いができる人はなかなかいないのよね(当たり前か w)

すると、一言

「分かりました、イグチ系ですね?(笑)」

するどい、、、読まれとる・・・さすが付き合いが長いだけあって、僕の思考パターンが完全にバレてしまうのだな、、ふむふむ。
まぁでも話は早いに越したことはない。余計な説明せずに済むもんね (*^^*)

パンケーキ作成&写真:メルヘン・ヤスコ

もうこれを見ただけで「美味しい」って分かりますよね~

ちなみに今回の「粉」は美味しく見えるために特別な粉(外食産業向け)を使って焼いてくれたらしい、、、そんなものあったのね、すごい。

ってことで、読まれてはいるものの、怯まず比較してみるのだ。

傘の表面

イグチの「傘」と言っても一概に「これがイグチの傘だ」と言えるものはない。例えばアカヤマドリなどは成菌になればひび割れて来るので、とてもパンケーキとは呼べない。また、ヌメリイグチなど傘の表面が滑っているものもパンケーキから除外してもいいだろう。

なので今回はこのイグチをパンケーキの検証用イグチとした。

なんて名前のイグチだと思いますか?

7月ぐらいに関西のあらゆるところで(公園などが多い)発生し、神戸で見られたかと思うと、同じと思われるイグチが大阪の公園などでも大発生したりしている。大きくて目立つので「なんだ、なんだ!」とあちこちでこのキノコの写真が乱れ飛ぶのである。

しかし、、実はこのイグチ「名無し」なんです。

僕も以前きのこびとで記事にした事があります。

「モッチリアミアシイグチ」と名付けましたが、一向に世間には浸透しません、、何故でしょうか?(笑)

まぁそれは置いといて、このモッチリアミアシイグチの傘の表面はビロード状であるので、すでにパンケーキというのは憚れるが、色味的にはパンケーキの色を醸し出してる、と言っても過言ではありません。

ちなみにパンケーキの表面はこんな感じ

パンケーキ作成&写真:メルヘン・ヤスコ

イグチ(またはキノコ)にはこの様な色合いのものは多い。
このモッチリアミアシイグチだけに限らず、この間見つけたオオアワタケなどもこういう傘の色をしている。

オオアワタケと思われるもの

こちらのものは傘がビロード状になっていないので、よりパンケーキに似ているのではないか、とは思いますがいかがでしょう?
ただ、ここから見える傘の裏がやや黄色味を帯びています。この事実を無視するわけにはいかないのです。

傘の裏

パンケーキ作成&写真:メルヘン・ヤスコ

傘の裏、と言いたいところですが、残念ながらこれは傘の裏ではありません。
焼いてる途中のパンケーキですな(笑)
空気穴が一部空いておりますが、これは「孔口」ではない事をちゃんと申し上げなくてはなりません。あくまでも空気が膨張して膨らみ、破裂したあとの穴であります。

さてではイグチ傘の裏はどうなっているのでしょうか?

モッチリアミアシイグチの傘の裏

さてこれが代表的なイグチの傘の裏です。
一般的な「キノコ」は傘の裏がヒダ状になっていますが、イグチはこのように小さな穴(孔口)がたくさん開いていて、スポンジ状になっているのが一般的です。

ただこの孔口も様々でアミタケやアワタケの様に「穴」が大きいものがあったりします。

アミタケの傘の裏

アミタケの孔口は大きく、そして多角形をしています。
拡大してみますね。

アミタケの傘の裏、多角形をしている。

また、ヤマドリタケの仲間で多いのは傘の裏が菌糸で覆われている、というもの。つまりこの状態のものは孔口が見えません。

キアシヤマドリタケの管孔

見事に「穴」らしいものは見えませんね。

これはキアシヤマドリタケと思われるイグチの仲間ですが、生長すればこの菌糸がだんだんなくなっていき、孔口が見えてきてちゃんとスポンジ状態になるのです。
つまりこの手のイグチは

「大きくなって胞子を飛ばせる状態になるまで、菌糸で胞子達を守っている」

のではないか、と僕は考えています。なんともお労しい。
イグチの仲間は、テングタケの仲間のようにヒダを守るためのツバ(内皮膜)がありません。その代わりにこうして管孔を守っているんでしょうね。

そして、イグチの仲間には「色が変わったり」するものもあります。

ドクヤマドリの傘の裏

管孔書道1段の僕が書きました一筆。題名「ドク」であります。

イグチでは珍しい毒キノコであるその名も「ドクヤマドリ」。そのまんまですな(笑)。こやつの傘の裏を木の棒などで引っ掻くとこの様に青変するのですな。

この現象は少なくともパンケーキにはありません。

パンケーキを食べようと思って、フォークを突き刺し、ナイフでゴシゴシやっていると、切ったところが青くなったら、、、、

気持ち悪いよね?(笑)

そんなある種トリッキーなパンケーキ、一時的にはブームになるかもしれませんが、やがて飽きられるでしょう、、、それがパンケーキの宿命というものなのでしょうなぁ・・・(遠い目)

そして、傘の裏の色のバリエーションもさまざま。

アメリカウラベニイロガワリ近縁種

アメリカウラベニイロガワリ近縁種の傘の裏である。
傘の裏は「白」「赤」「茶色」「黄色」「紫」「黒」など様々な色があるが、この色に寄っても一定の傾向があって、例えば傘の裏が紫色のイグチなどはニガイグチの仲間が多く、ちょっとちぎって齧ってみると苦かったりする。

そんな傾向はパンケーキにはない!(キッパリ!)

そもそも苦いパンケーキなんか食べるのは「苦行」でしかないもんね(笑)

ではでは、じゃあちゃんとしたパンケーキの「傘裏」を見てみましょう。

パンケーキ作成&写真:メルヘン・ヤスコ

え?さっき見た??(笑)

しかたないやん、、パンケーキには表も裏もないんだからさぁ、、、

はい、最後に重要な事を言いましたよ。
とっても大切なんでもう一度いいますよ~♪

パンケーキには表も裏もありません!!

びっくりした?

じゃあ、そう言うアナタに極めつけのカット写真で説明しましょう。

断面

パンケーキ作成&写真:メルヘン・ヤスコ

いや、マジ美味そう、、、、

写真の撮り方も上手いですよね。
こういった食べ物写真は「逆光」で撮るのが基本。そして余計な光をいれず、自然光だけでほんと上手く撮れてます。

さてこのパンケーキ。2段重ねになっているのはわかりますね。
傘の表面はホットプレートの焼き目が付いて中はフワフワの状態が見て取れます。いわゆる「中空」の状態に近いですが、けっしてスカスカではなく、どちらかというとモチモチして、しっかりとした重量を感じます。
この中にシロップを染み込ませて、ほんのり解けたバターと一緒に食べることにより、まろやかなで芳醇な香りが口の中から鼻に抜け、実に幸せな気持ちになる逸品なのですな、、、これが。

ではでは、先に載せたモッチリアミアシイグチを切ってみましょう。

モッチリアミアシイグチを切ってみた

真っ白ですな(笑)

いや真っ白の中にも確認できることがあります。
よく見てください。傘の上部と下部の色と形が変わっているのが確認できます。上部はまさに傘の「肉」の部分です。しっかり締まった感じが見て取れます。

しかし、下の部分は縦に筋が入っていますね?
これは管孔の「孔」の部分を縦切りにしたものです。つまりはこの「孔」の側面に胞子を生み出す「担子器(胞子製造機 w)」なるものが並んでいて、この孔を通って(という表現でいいのか?)、孔外へと飛散していくことになります。

そんな管孔も様々で、めちゃくちゃ薄い管孔もあったりします。

ニセアシベニイグチ近縁種

ニセアシベニイグチ近縁種であるこのイグチの管孔を見てください。

え?見えない?(笑)

黒バックで、しかも管孔がちょっと青変してるんでとっても見にくいと思いますが、傘の肉の厚みに比べて、管孔が極端に薄いです。

君は生殖活動する気あんのか?っていうぐらい薄いですな(笑)

そして、傘の裏のときもありましたが、切断しても色が変わるイグチがおります。

アメリカウラベニイロガワリ近縁種

イロガワリの仲間などは、この様に切断したら見事に傘の肉も、管孔も見事に青変します。
欧米ではこの様に色が変わるキノコを食べてはいけない、、、という言い伝えがあるようですが、日本人は平気で食べちゃいます(笑)

そして、改めて言いますが、パンケーキは切っても青変しません!!

将来「イロガワリパンケーキ」なるものを開発されるかもしれませんが、そんなキワモノパンケーキ、たぶんキノコマニアにしか売れんでしょうな(笑)

総論:イグチはパンケーキに似ているのか?

パンケーキ作成&写真:メルヘン・ヤスコ

さて、いろいろ検証してきましたが、いかがでしょうか?

イグチはパンケーキに似ていない、ってことが分かってもらえましたでしょうか?

いやね、キノコを全く知らない同級生の友人たちにイグチを見せて「まるでパンケーキやなぁ~」っていうのは良いんです。
もう、そんなものは想定の範囲内だし、そうやってキノコに興味を持ってもらうのは望むところ。

しかしね、少しキノコを知ってる人とか、Facebookのきのこ部に参加して、少しでもキノコの事を知りたい、って言ってる人が、その口から、「パンケーキみたい」と出てくるのには僕は反旗を翻したい。

「キノコに対する姿勢としてそれでいいのか?」

とね。
そして

「そんな安直でかつ陳腐な表現でイグチを語っていいのか、チミ達。」

とね。

やはり真剣にキノコと対峙していくには、それなりの姿勢、ってものがあると思うんだよね。その辺り、ちゃんと心得てキノコに対して欲しいのですよね。

ってことで、結論としては「イグチはパンケーキではない」これで決まりかと思います。

いかがでしょう?

・・・

いかがでしょうか?

写真提供:K島さん

あれ?

あれれ?

写真提供:K島さん

あれれれ???

君はもしかして、パンケーキ??

パンケーキなのかーーーーーい?(笑)

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