世界のキノコ切手

『世界のキノコ切手』  飯沢耕太郎

近年、とみに胞子活動を活発化させている飯沢耕太郎氏がおそらく最初に手がけたキノコ本。

そもそもがマイナーなキノコなのにも関わらず、さらにその上を行って「キノコ切手を集めてみました」と来たか。その行きすぎ感というか突き抜け感というか、採算度外視にもほどがあるが、出版元のプチグラパブリッシングさんも

「こんな企画通るかっ!おととい来やがれってんだ、べらぼーめ!」

とか言わずに、よくぞ受けてくださいました。

あとがきによれば、キノコ切手収集が趣味だった飯沢さんと別の企画で出会ったこの本の担当者さんが、たまたまキノコ好きの切手好きだったことから始まったのだとか。まさしく偶然の産物。別々の胞子から伸びた2本の菌糸がごっつんこして絡み合う、そんな場面を想像してしまう。

さて、中身はというと、これがけっこう出来が良くて。
集めも集めたり800をゆうに超える世界中のキノコ切手が地域別にまとめられているのだが、その多彩なこと。伝統あるキノコ文化を持つ東西ヨーロッパをはじめとして、北米、中南米、アジア全域、オセアニア、それに中東からアフリカまで、ありとあらゆる地域から発行されている。中にはサントメ・プリンシペとかいう聞いたこともない国が大量に発行していたりして(どうやら貴重な収入源らしい)興味は尽きない。
絵柄も多彩で、描かれるキノコの種類が多いのはもちろんのこと、写実的なもの、メルヘン調のもの、極彩色のもの、動物とセットで描かれているものなど、タッチも多様で地域色豊かなのが楽しい。

個人的にはハンガリーやチェコスロバキアあたりのが好きだなー。スウェーデンも渋くていい。タイやベトナムなど東南アジア勢も意外に侮れないし、モンゴルなんかも悪くない。ディズニーキャラの足下とかにチョロっと生えてて、え?キノコどこにあるの?ってのも混じってて、これはこれで楽しめる。

挿入されるコラムや巻末の対談も小気味よく、全体のデザイン・レイアウトとあいまって非常にバランスの良いまとまり具合。この本で味をしめたのかどうかは知らないけれど、この後も飯沢さんがキノコ本を連発して新しい潮流を生み出したことを考えると、この地味な本はけっこうエポックメイキングな立ち位置にあるのかもしれん、などと思ったりする。

新しい日本のキノコ切手、早く出ないかなー(現行では激ショボのシイタケ切手のみ)。

「月刊きのこ人」(こじましんいちろう)2012年02月12日に掲載分を再掲載

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